松田聖子「妖しいニュアンス」楽曲研究~良フレーズを何度も繰り返して曲の世界に引き込む~
こんにちは、研究員第一号のいっきゅうと申します!
今回は「妖しいニュアンス」の楽曲研究です!
この曲は「Strawberry Time」というアルバムに収録されている曲で、大村雅朗さんという方が作曲した曲です。
シンプルなドラム&ベースにギターやシンセ、ストリングスやボーカルなどのウワモノをどんどんトッピングしているといった作りになっていますね。('◇')ゞ
使うコード進行のパターンがそこまで多くないのも、大人なポップス感を育てるのに一役買っています。
また、歌詞はどうかというとこれもまたちょっと大人っぽくて、
恋にうぶな男の子に合わせて手加減してあげてる大人な女性を描いています。
所謂、「男が考える理想の女の子(空想世界の生き物)」ではなく、「ごく普通な女性」のリアルな心理を描くのが松本隆さんはめちゃくちゃ上手い。
今現在の価値観で見ると全然違和感ないので、松本隆さんの先見の明には本当に驚かされます。(-_-)
作詞は松本隆さん、作曲は大村雅朗さん、編曲は大村雅朗さんです。
それではコード進行を見ていきましょう。
1.イントロ
キーはE♭とします。
|Fm7|×6の後
|E♭M7|×2 Aメロに続く
ディグリーネームで言うと、E♭M7がⅠM7でトニックの役割、Fm7がⅡm7でサブドミナントの代理ですね。
(ちなみに、キーを平行短調であるCマイナーだとすると、E♭M7が♭ⅢM7でトニックの代理、Fm7がⅣm7でサブドミナントの働きをしています)
2小節目の4拍目、4小節目の4拍目、6小節目の4拍目は単に弾き方を変えただけでFm7であることには変わりありません。
イントロはこの2つのコードのみで構成されており、そしてこの型を保ったままAメロに突入していくので、ぶつ切り感がなく曲に統一感が生まれています。
また、何度も同じフレーズを繰り返す(反復)ことで、聴き手のテンションを徐々に高めていくという効果もあります。
展開が少ないので地味目な印象になりがちですが、所謂スルメ曲になりやすいのもこのパターンなのかなって思います。
ところで、このⅡm7とⅠM7の2つを繰り返すのって、前に紹介した「Blue」もそうだったので結構定番なのかも知れませんね。
覚えておいて損はなさそうです。(*´ω`)
seiko-laboratory.hatenablog.com
2.Aメロ
Aメロのコード進行は書くまでもないというか、イントロと同じものを繰り返すだけなので省略します。
2.1聖子ちゃんのささやき歌唱
聖子ちゃんがこんな感じでささやくように歌っているのって実は結構貴重なんじゃないでしょうか。(^。^)y-.。o○
コード進行の展開が少ないイントロとAメロといい、聖子ちゃんのささやくような歌唱といい、徹底的にアダルトな世界観を作り上げようとしているのが見て取れますね!(*'▽')
元々、声質が抜群に良いのでやっぱり様になりますね、すごく。
初期のフレッシュな声の伸び半端ない頃の歌もいいけど、技術を覚えて丁寧に歌い上げるこの頃の歌もいい!(*´ω`)
結論、どっちもすごくいいってことで!(笑)
3.Bメロ
最初、2小節ごとに転調します。
|B♭monD♭|C7|(Fハーモニックマイナースケール)
|A♭monB|B♭7|(E♭ハーモニックマイナースケール)
この先、キー=G♭です。
|E♭m| G♭onD♭|C♭M7 Gm7onC|Gm7onC|サビに続く
(Gm7onCからキー=Fに転調しています)
Bメロからは結構目まぐるしく展開が変わっていますね!
今までの記事でも散々口が酸っぱくなるほど言ってきた「Aメロとの差別化」をこの曲でもしっかりやっていて、最も分かりやすい「転調」という方法を使って差別化を図っています。
3.1型を移高して繰り返す
最初の2小節のその次の2小節は形が一緒です。コード進行もメロディも!
要は「コピー&ペースト」のようなイメージで、音の高さ等だけ変えて同じ「型」を繰り返しているのです。
同じ「型」が繰り返されることによって、スムーズに曲が流れている感じがしますよね。
これは作曲するときに使えそうですね!あ、別にこの曲のように完璧に同じ形にする必要はないですよヽ(^o^)丿。
あ、そうそう、ベースが順次下降しているのもなかなか上手いですね。('◇')ゞ
3.2トニック以外のメジャーセブンスにおける使用スケール
キー=G♭に転調してからのC♭M7(実質BM7と同じ)ではボーカルのメロディラインに「リディアンスケール」(略してLyd)が使われていて、それが曲中のちょっとしたアクセントにもなっています。
「リディアンスケール」というのはメジャーセブンスコードの上でよく弾かれるスケールで、「ドレミファソラシド」の「ファ」の音を半音上げた形になります。
つまり、その「ファ♯」をメロディに組み込みことによってこれは「リディアンスケール」を使っているよと聴き手に伝えることができます。
この「ファ♯」を特性音といいリディアンスケールを使う時はこの特性音を織り交ぜながらモードの雰囲気を出していくのが良いです。
特徴としては、とても明るいスケールでありアボイドノートがない、メジャーセブンスでよく使われるといったところがあります。
まあ百聞は一見に如かずということで、実際にリディアンスケールがどんなものか次の音声を聴いてみてください。
前者が普通のメジャースケール(アイオニアン)で、後者がリディアンスケールです。
どうです???なんだかいい感じでしょ???(*´ω`)
ではこのリディアンスケールが妖しいニュアンスではどこで使われているか、歌詞をみて説明しましょう。
言えないのね そんなとこかわいい
の「かわいい」の部分に注目!
ここではC♭M7なのでC♭Lydを使うわけです。
そして、ここの「か」が「F」の音でして、C♭Lydではいわゆる特性音にあたります。
(ちなみに、最後の「い」も「F」の音で、この時はマイナーセブンスの7番目の音にちょうどなっています)
このようにメロディラインに普通のメジャースケールとは違うスケールを持ってくることで、より多様なメロディを作ることができるようになるんですね!( *´艸`)
以上のことを踏まえて、Bメロの後半を聴いてみてください。(チープな音ですいません)
聴き手にとっては何気ないメロディでも、作り手はいろいろなことを考えているのが分かりますね!(´ー`)
4.サビ
最初の4小節、キーはFです。
|F|×4
この先、キー=A♭に転調。
|B♭m7 E♭|E♭| A♭M7 Csus4|Csus4 C|
この全体を2回繰り返したのち、2番のAメロにつながる。
4.1サビ内でも転調させる
サビ内でも転調させることでよりひねりのあるメロディが出来上がっています。
また、ここでの転調はお馴染みの短3度上の転調ですね。転調してからはこれまた定番のツーファイブワンで手堅くいっています。
短3度上への転調はこちらの記事でも
seiko-laboratory.hatenablog.com
ツーファイブワンの仕組みについてはこちらの記事で取り上げています。
seiko-laboratory.hatenablog.com
ばちこりと過去記事を紹介していくううぅぅぅ
4.3アボイドを避ける
2番のサビでは、「妖しいニュアンス♪」と歌っているときにキーボードがメジャースケール(アイオニアン・スケール)を順次上行しているのが分かります。
このとき、きっちりキーボードはアボイドノートである「B♭」を避けています。
短い音なら問題なくても、長い音だと濁ってしまうからですね。
よく分からないという人も実際に聴いてみれば「ああこれか」となると思います。
5.間奏
キーはFです。
イントロと同じようにGm7とFM7の繰り返しになります。
キーが変わっているだけですね。
これもまた、「型」の以高と言えるっちゃ言えるでしょう。
6.全体総括
僕はやっぱりこの曲すごい好きですね!
洒落ていてダサさがない。ギターの使い方も贅沢で曲のノリを良くするのを助けてる。さすが「Sweet Memories」を作った人と言うべきか。
あと、聖子ちゃんの歌がいい!!!(n回目)
でもこれライブで歌ってるの見たことない気がする。
見たいなあ……(ちらっ
ライブでこの曲歌ってほしいなあ……(ちらっ
……だれも見てないか……空しくなってきたところで、今回の記事は〆させていただきます。
皆さん、さよなら、さよなら、さよなら~_(:3」∠)_。
あ、スターほしいです(直球)。モチベーションになります。