松田聖子「Blue」楽曲研究~平行調は表裏一体の関係にある~
こんにちは、研究員第一号のいっきゅうと申します!
今回は1988年のアルバム「Citron」からの一曲、「Blue」の楽曲研究です!
ここで、軽ーく「Citron」について触れておきましょうか。(。-`ω-)
「Citron」はDavid FosterというAORで有名な方がプロデュースしたアルバムで、作詞は2曲を除き松本隆さんですが非常に洋楽チックなサウンドになっています。
(このアルバムに関わった二人、デヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンが出した有名なアルバム↓)
キーボード系を全面に押し出していたり、ベースもシンセベースを使っていたり、ドラムも打ち込みを使ったりと80年代感あふれ、聖子さんの歌い方もそれに合わせて少し変わっています。
この「Citron」は自分にとっては思い入れがあるアルバムで(前言ったっけ)、松田聖子さんを聴き始めた当初、ちゃんと通しで聴いた最初から2番目のアルバムでした。
というのも当時の僕は80年代の音楽にハマってて、80年代っぽいサウンドに飢えてたんですよ。80年代サウンドくれ~禁断症状出てまう~!みたいな。
そんな時に、松田聖子さんの「Citron」に出会いましてね。
もちろん聖子ちゃんのことは既に知っていて有名なシングル曲は聴いていましたし(飛び飛びでしたが)、「Sound of my heart」というSEIKO名義のアルバム*1も聴いていましたから、すんなりと「Citron」にのめり込むことができました。
「これこれ、こういうの欲してたんよ~_(:3」∠)_」
なかでも「続・赤いスイートピー」には感動して、これすんごいいい曲じゃんって、何度もリピートしてましたね。(´・ω・`)
そもそも「赤いスイートピー」に続きがあるのか!っていう驚き。
まあ「続・赤いスイートピー」についてはまた今度取り上げるとして……。
誰得な思い出話はこの辺りにして、そろそろ「Blue」のコード進行を見ていきましょう。(*´ω`)
作詞は松本隆さん、作曲はTom Keane・Michael Landau・David Foster 編曲はDavid Fosterです。
1.マイナー・ダイアトニック・コード
さて、今回実際のコード進行に突入する前に一つ確認しておかなければならないことがあります。
今回の曲は今までこのブログで紹介した曲とは違い、短調なのです。正確に言うと、E♭ナチュラルマイナースケールです。今まで取り上げたものは全て基本的にメジャースケールだったのです。
このかっこ内は別に飛ばしてもいいです。↓
(ですが、E♭ナチュラルマイナースケールはG♭メジャースケールは構成音が同じであるため(この関係を平行調という)、この曲も長調として解釈しても問題はありません。
というか厳密に区別するのが難しかったりする、若しくはあまり意味がありません。
実際、BメロなんかはG♭メジャーに転調していると考える方が自然です。
ただ、構成音が全て同じでもダイアトニックコードそれぞれの役割が異なるので、この2つの調は似てるようでちょっと違うものなんですね。
今回は、基本的にE♭ナチュラルマイナーとみなして考えていきます。)
ということで、ナチュラルマイナースケールにおけるダイアトニックコードを確認しておきましょう。
曲にならって、E♭のマイナーダイアトニックコードで考えてみます。
E♭m7 (Ⅰm7) Fm7(♭5) (Ⅱm7(♭5)) G♭M7 (♭ⅢM7) A♭m7 (Ⅳm7) B♭m7 (Ⅴm7) C♭M7 (♭ⅥM7) D♭7 (♭Ⅶ7)
(ちなみに、C♭M7はBM7と事実上同じです)
以前でも、借用和音や一時的な転調等で多々出てきたコードもありますね。
今回の曲では、基本的にはこの上記のダイアトニックコードを使うわけです。
次に、この7つのコードの役割について確認しておきましょう。
メジャーダイアトニックと同様に、Ⅰm7はトニック、Ⅳm7はサブドミナント、Ⅴm7はドミナントと考えられます。*2
そして、♭ⅢM7はⅠm7とサウンドが似ているため、トニックの代理として使えます。
これ以外の、Ⅱm7(♭5) ・Ⅳm7・♭ⅥM7・♭Ⅶ7はサブドミナントの代理として使えます。スケールの6番目の音、E♭ナチュラルマイナースケールでいうと「B」が含まれているからです。この件についてはこちらの記事のサブドミナントマイナーについての説明でも取り上げています。
seiko-laboratory.hatenablog.com
さて、これらを踏まえて今度こそ「Blue」のコード進行に入っていきましょう!(;´∀`)
2.イントロ
キーはE♭mです。
|G♭M7onE♭|G♭M7onE♭|A♭m7|A♭m7|×2
Aメロに続く
2つのコードを交互に繰り返していますね。JPOPに比べて洋楽(というかアメリカのチャートに入るような音楽)は使うコード数が少ない傾向にあります。というかJPOPが多すぎるのかも?
こういう2つのコードの繰り返しや、4つのコードの繰り返し等の「ある一定のコード進行を繰り返す」というのは洋楽のポップスにおいて頻出のテクニックです。
「Citron」の1個前のアルバム「Strawberry Time」の「妖しいニュアンス」のイントロ、Aメロでも2つのコードのみを使い交互に繰り返すことで意図的にJPOP感をなくし洋楽感を出していましたね。
ところで上の2つのコードはどちらもダイアトニックコード、♭ⅢM7とⅣm7です。
♭ⅢM7はトニックの代理、Ⅳm7はサブドミナントであり役割も違いますね。
♭ⅢM7で少し落ち着かせ、Ⅳm7で少し暗く不安定感を出しています。
3.Aメロ
キーは同じくE♭mです。
|E♭m|E♭m D♭ |B♭monD♭|G♭onB♭ C♭|×2
Bメロに続く
ディグリーネームで表すと、
|Ⅰm|Ⅰm ♭Ⅶ |Ⅴm|♭Ⅲ ♭Ⅵ|×2
となります。
そう、お分かりの通りAメロでも使用されているのはダイアトニックコードのみです。
ごちゃごちゃしてなくて潔いでしょ?( *´艸`)
そして|Ⅰm|Ⅰm ♭Ⅶ |はマイナーからメジャー、|Ⅴm|♭Ⅲ ♭Ⅵ|でもマイナーからメジャーの流れになっていて、大きく見るとマイナーからメジャーという「型(パターン)」を繰り返しています。
このように大まかな「型」を決めて繰り返すのも、曲のチグハグ感がなくなって効果的です。
似たような考えはこちらの記事でも解説しています。良かったらどうぞ。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
seiko-laboratory.hatenablog.com
(……ってさっきも貼った記事ですねこれ……。)
4.Bメロ
ここでは平行調のG♭に転調していると考えます。
|C♭M7|G♭ D♭|×2
|C♭M7 |G♭ A♭m|G♭onB♭ C♭|D♭| D♭ |サビに続く
ディグリーネームで表すと、
|ⅣM7|Ⅰ Ⅴ|×2
|ⅣM7|Ⅰ Ⅱm|Ⅰ Ⅳ|Ⅴ| Ⅴ |
となります。
(因みにE♭ナチュラルマイナーの場合、
|♭ⅥM7|♭Ⅲ ♭Ⅶ|×2
|♭ⅥM7|♭Ⅲ Ⅳm|♭Ⅲ ♭Ⅵ|♭Ⅶ| ♭Ⅶ |
となります。)
これまたダイアトニックコードのみ!
な、な、なんて潔いんだああああああ!!!分かりやすくて良い!!うん!!!
Bメロではメジャー調に転調して、「Aメロとの差別化」を図っています。
さらに、その中でも意図的にメジャー系のコードばかりを使っています。
わりとマイナー感があった「Aメロ」と対比させるために「Bメロ」でメジャー系コードを多用したんですね。
ほら、実際聴いてみても明らかにAメロに比べて明るい感じがするでしょ?
使っている音自体は同じでも、使いようによっては違うように聴こえる。
だから平行調は表裏一体だって言われるんですね!(*´ω`)
また、Bメロではほとんどがいわゆるスリーコード(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ)であり、非常にシンプルな構成になっています。
「Aメロとの差別化」を図ることに関してはこちらの記事でも取り上げています。
seiko-laboratory.hatenablog.com
ちなみにこの記事の曲もAメロでは2つのコードのみを繰り返していたり、コード進行のみに絞ってみれば共通点が見えますね。「本気にSORRY」では「Blue」とは反対にBメロでマイナー感を強く出しています。
5.サビ
キーはE♭mに戻ります。
|G♭M7onE♭|G♭M7onE♭|A♭m7|A♭m7|×2
この後、Aメロに戻る。
♭ⅢM7とⅣm7の繰り返しですね!
そうです、皆さんお気づきの通りこれはイントロのコード進行と同じです。
この進行はこの曲のメインディッシュみたいなもんなんですね。(*'ω'*)
しかも、コード進行だけでなく、ドラムパターン、ベースライン、ギター等の細かいサウンドも大体一緒です。(; ・`д・´)
曲中で何度も同じフレーズを繰り返すことでより聴き手に強く印象付けているのでしょう。
イントロのあれが布石になっていて、それをまたサビに持ってくることで2度美味しいというわけです。
ところで、イントロの型をサビに持ってくることについてはこちらの記事でも取り上げています。(^。^)y-.。o○
seiko-laboratory.hatenablog.com
(またこの記事かよとか言わないで(´;ω;`) ちゃんと目当てのチャプターに一発で飛べるようにそれぞれしてるから(´;ω;`))
6.2番の後の間奏(Cメロ)
|G♭monD♭| G♭monD♭| D♭M7 |D♭M7 |×2
の後ギターソロ
|G♭m|G♭m|A♭| A♭|A| G♭m|A♭sus4| A♭|サビに続く。
キーについてですが、|G♭monD♭| G♭monD♭|のときはD♭ナチュラルマイナースケールに転調していると考えられます。
サビの最後のA♭m7を仮のドミナントとみなして自然に転調しているのです。(あくまで一つの解釈です)
そして、| D♭M7 |D♭M7 |のときはキー=D♭mからD♭メジャースケールに転調しています。これも同主長調への転調なのであまり違和感なく転調できます。
その後、ギターソロが入ってからは、D♭ハーモニックマイナースケールに転調しています。
ディグリーネームで表すと、
|Ⅳm| Ⅳm| ⅠM7 |ⅠM7 |×2
|Ⅳm|Ⅳm|Ⅴ|Ⅴ|♭Ⅵ| Ⅳm|Ⅴ|Ⅴ|
転調を多用してドラマチックな展開を作っていますね!
ギターソロもしっかりツボを押さえています。
個人的な好みの話になりますが、僕はギターソロ大好きで(幼い頃からメタルとかばかり聴いてきた弊害か)好みのギターソロがあったりするとそれだけでその曲を好きになります。女子にボディタッチされたら一発で落ちる中学生男子的なあれです。
んで、ぶっちゃけ、この曲のギターソロは特別凄いテクや、変則的なフレーズが使われているわけでもなく、楽曲の雰囲気を損なわない程度に抑えられています。
それでもフレーズの選び方がやっぱりとても上手いので、難しいソロでなくとも十分アクセントになっていると思います。
具体的に言うとすれば、G♭mのとき、第3番目の音「A」から入ることでマイナー感を強くだしたり(第3番目の音はメジャーかマイナーかを決める重要な音)、チョーキングを使って「歌わせたり」(特に最後が顕著)。
7.全体総括
今回、初めてマイナー調の曲を取り上げました。
やはりマイナー調ということもあって、終始どちらかというと暗い雰囲気が漂っています。(特に今までの聖子ちゃんのシングル曲と比べると)
サビも♭ⅢM7とⅣm7の繰り返しでドミナントがないのもあって、終始ふわ~っとしていますよね。
アメリカのポップスとかこういうの多いし、僕はわりとこのパターン好きなんですけど、皆さんはどうでしょうか?(*'▽')
僕はシングル曲のマラケッシュよりこっちのが断然好きかもですね。
マラケッシュはちょっと編曲がダサく感じるというか、なんか中途半端な感があるなあとどうしても思ってしまうので。。。(いやなんだかんだマラケッシュはあれはあれで結構好きなんですけどね(/・ω・)/)
歌詞もこれ、失恋の詩でしょうか。暗い話なのは間違いないです。捉えようによってはちょっと怖さも感じるかも。(; ・`д・´)
聖子ちゃんの歌に関しては……正直、文句の付けようがないというか、間違いなく上手いし声も通るし高音も出てるし、ノリにノッてるなあと思います。(*'▽')
過去の自分もこの頃の聖子ちゃんの歌を聴いて少しずつ松田聖子さんの虜になっていったので、聖子さんのこと知らない人が聴いても上手いと感じるのではないでしょうか。(・∀・)
ということで、「Citron」からの1曲「Blue」 おすすめです!!!!!
PS.最後のサビで流れる英語セリフがどうしてもよく分かりません。(´;ω;`)
「come close to me」とかは聞き取れましたが他はいまいち分からない箇所が……。(´;ω;`)
分かる方、もしよければ教えてくださいお願いします。m(__)m