松田聖子研究室

松田聖子の楽曲はもちろん、彼女に関するありとあらゆるものを20代の研究員が独断と偏見により徹底的に研究します!

松本隆作品から学ぶ作詞の極意!~「今夜はソフィストケート」歌詞研究・前編

1.歌詞はいいに越したことはない!

こんにちは、研究員第一号のいっきゅうと申します!

今回は実際の聖子ちゃんの曲を基に、歌詞を分析していこうと思います。

そこで一つ質問があります。

 

皆さん、曲を聴くときに歌詞って意識して聴いてますか?

 

実を言うと、僕は殆ど歌詞聴いてなかったんですよ。

 

やっぱり基本的には楽曲重視ですし、そういう人が多いんじゃないかなって思います。

 

例えば、歌詞がダメダメ、曲は良い」は普通に気持ちよく聴けると思うのですが、

「曲がダメダメ、歌詞は良い」ではやっぱり聴く気にならないですよ。

せっかく歌詞が良くてもそれは死んでるようなもんですから。

 

だからぶっちゃけ、歌詞なんて響きさえ良ければ何でもいいしどうでもいいじゃんって思ってたりもします。

 

しかしですね!!!

 

歌詞が良いに越したことはない!!!

 

これぞ宇宙の真理!!!

 

これに反論できる人ってまずいないと思うんです。悪いよりは良い方がええに決まってるやん?みたいな。( ゚Д゚)

 

それでですね、お分かりの通り良い歌詞というのは、曲が優れていること前提で生まれるものなんですが(曲が駄目だとそもそも評価すらまともにされない)その点聖子ちゃん、特に80年代の松田聖子は安心ですね。

 

だってどの曲も高水準で基準値は優に満たしてるもん!( ・ω・)

 

2.「今夜はソフィストケート」歌詞研究~まるで一本の映画のように

今回題材とするのは、「今夜はソフィストケート」という曲で、「Windy Shadow」というアルバムに収録されています。

今夜はソフィストケート

今夜はソフィストケート

  • 松田 聖子
  • J-Pop
  • ¥250

この曲の歌詞はなかなか面白いなあと思っているんですよ。

 

いや何がって、一口では言い表せませんが、歌詞に出てくる単語一つ一つがきちんと意味を成して、それぞれが上手く連動してるんですよね。

 

とにかく、「今夜はソフィストケート」研究していきましょう!

作詞はもちろん松本隆さん、作曲は佐野元春さん、編曲は大村雅朗さんです。

2.1Aメロ

歌詞には様々な書き方がありますが、この曲ではとある一人の女性目線、一人称で書いています。松本さんはこのパターン多いですよね。

 

それでまず舞台設定についてですが、優れた歌詞にはきちんと「いつ、どこで、誰が(何が)、どうした(起こった)」が示されており、人物の動機や感情の動き、人間関係も描写されています。(ただ、要素によっては物語に必要ないと判断された場合、カットされたり明かされないこともあります)

 

それらがしっかりしていると、私たちは曲を聴いたときにまるで良質な映画を観終えたかのような錯覚に陥るんですね。

 

では、まずは一番のAメロを引用して見ていきましょう。

忘れた頃に鳴り出した懐かしいベル

食事でもしないかって 低い声が流れる

黒いドレス 精一杯 着飾ったのに

表は雨 だいなしだわ エナメルの靴

http://j-lyric.net/artist/a0004ad/l00f7df.html

2.1.1始まりのインパク

この歌詞を見ると、大変多くの情報が含まれていますね。

 

何気に上手いなあって思うのは、「知り合いの男からの電話でベルが鳴る」という、物語が動くきっかけとなる「事件」をど頭に持ってきたこと。

 

これは映画ではやはりよくある手法で、普通開始10分から15分辺りに起こる事件(物語が動きだし日常から非日常へと移行するトリガー)を、あえて最初に持ってくることで観客の熱量を一気に引き上げ興味を持たせるというものです。

 

もしもこの物語の歌詞を下手な人が書いたら、ベルが鳴るイベントの前に、「一人で静かに紅茶でも飲んでいる的」なしょうもないいらねえ描写をして歌詞の無駄遣いをしてしまうかも。

 

曲の初っぱなからいきなり気になるイベントを起こすことで、歌の世界に引き込まれますよね。

 

(そういえば、楽曲の構成でも、青い珊瑚礁風立ちぬのようにサビをど頭に持ってくることでインパクトを残すものも多いですよね)

 

さらに、登場人物、つまり主人公の女ともう一人の男はこの時点で存在を明かされるので無駄なくスピーディーな展開になっています。

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2.1.2具体的な言葉

そして、具体的な言葉にも注目です。

 

低い声、精一杯着飾った、表は雨、エナメルの靴、といった太字のような具体的な言葉を入れることでより細かい情景や感情が浮き彫りとなり、説得力が増します。

 

例えば、「精一杯」を入れることで主人公の女性は電話をしてきた男に気があることが直感的に分かりますよね。

 

女性は興味のない男性と会うのに「精一杯」着飾ったりはしないでしょう。

 

でもこれが単に「着飾ったのに」としか書かれてなかったら?

 

うーん、興味ない男性の前でも身だしなみとして着飾るのは当然だしなあ(-""-;)、なんて観客に要らぬ解釈をさせてしまいます。

 

「精一杯」とあることで主人公が男に気があることを強調しています。

 

こういったあやふやを回避する役割も持っているんですね~具体的な言葉には。

 

また、エナメルの靴といった具体的な小道具を上手く使うことで物語はよりリアリティが増し面白くなります。

 

……ところで、「黒いドレス~」の部分からはもう電話してきた男と対面しているのでしょうか。僕は恐らくその線が濃厚かなと思います。

「表は雨」とあるので、室内にいるとは思うんですが。多分、家から店までの間に靴が雨に濡れてしまって、「エナメルの靴が台無しだわ」と男に向かって言っている状況?

いや違うかな、まだ男とは会ってなくて、会う前に「台無しだわ どうしよう」と主人公が困っている状況?

なんとなく前者かなあって思いますが確信は持てません。まあ正直この場合どちらでもいいと言えばそうなんですが(笑)。とりあえず今回は前者の解釈と仮定して話を進めていきます。

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2.1.3「省略」を使いこなす

Aメロの「声が流れる」から「黒いドレス」に至るまでの省略が上手い。


何がって、大胆にカットするのがですよ


「声が流れる」の後、どうしようと悩んだり、約束のお店まで行く間の描写だとか、雨の中一人でドキドキしながら歩く場面とか、そういう過程を全部省略して踊る場面に切り替わるわけですからね。結構省略してますよね。

 

でも省略しても問題ないんです。

 

前後の出来事を書いちゃえば、その間の過程は観客が各々勝手に想像で補ってくれますから。(-ω-)/

 

4コマ漫画とか手塚漫画や藤子F不二雄漫画などを意識して読んでいると、かなりの量の「省略」が使われているのが分かりますがちゃんと理解して読めますもんね。

 

歌詞の世界に、あえて余白を残していくのです。


このように物語に必要ない場面は思いきってカットしていく、そしてそれをどこまでしていいかの判断能力、作詞するときには非常に必要な能力なのでしょう。うーん、難しい(; ・`д・´)

 

どうですか?この短いAメロの間にも情景描写を巧みに交えながらも舞台設定をほぼ終えています。

 

それでもっとすごいのが、ここで出てきた設定や小道具がこの後にもちゃんと生きてくるところですよ!

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2.2Bメロ

では続き、一番のBメロを引用します。

裸足で踊って 困らせてあげる

人の視線 気にする人だから

ワイン・グラス とりあげないで

別に酔っているわけじゃないのよ

http://j-lyric.net/artist/a0004ad/l00f7df.html

2.2.1AメロとBメロのつなぎ

ここではまず、AメロとBメロのつなぎ方が上手いと思います。

 

エナメルの靴」「裸足」という同類項(どちらも足に関連するもの)の言葉をつなげる(Aメロの終わり、Bメロの始まりに配置)ことで、聴き手は違和感なくすんなりと情景を思い浮かべることができます。

 

さらに、Aメロで起こった「雨で靴がだいなしになる」という出来事が「原因」となり、

Bメロで「裸足で踊る」という「結果」につながっています。

 

ここできっちりと因果関係が成り立っていて、「原因系」から「因果系」への流れが出来ています。

そしてさらに「裸足で踊る」がまた「原因」となり、人の視線が気になる男が「困る」という「結果」が生じるわけです。

そしてさらにry)・・・

ということで、

 

因果関係を意識することも、上手く「つなげる」ためには重要

 

だということが分かります。

 

Aメロのストーリーが布石となってきちんと後の歌詞に響いてくるのが素晴らしいですね。

 

 

2.2.2情景描写と人物描写を同時に行う荒業

 Bメロの2行目の

 人の視線 気にする人だから

http://j-lyric.net/artist/a0004ad/l00f7df.html

 これの何がすごいって、

 

情景描写と人物描写を一気にやっている点です!

 

この短いフレーズから分かる情報は以下の通りでしょうか。

  • 電話主の男が「人の視線」を気にするタイプの男だと言うこと。
  • 主人公の女は、彼の特徴を今でもよく覚えていること。→彼女は心底彼のことを好きだったこと。
  • 彼らの周りに何人か、もしくは何十人かはいること。

 男女二人の人物説明はもちろん、彼らの周りにも同じように食事をしている人が複数いて、恐らくその人たちの視線がちらちらと二人の方を向いている、といったような景色が想像できます。

なるほど、なるべく短い文章でより多くの情報を伝えなければならない歌詞において、

 

一つの文、フレーズに複数の意味を持たせる

 

ことは意識した方がいいのかもしれません。

 

そしてそれを突き詰めると、

 

一つの言葉、単語に(物語上において)複数の意味を持たせる

 

ことになります。

 

この考えは、松本隆作品における「小道具を上手く使ったテクニック」の基本にもなっているんではないかと僕は考えています。

 

この曲でも「ワイングラス」が歌詞全体を通して出てきていますが、この曲を象徴する印象的な小道具であり、終始これがとてもいい働きをしています。

松本隆さんの歌詞には小道具を上手く生かしたものが多くて、そういう曲も後々順を追って紹介できたらなと思っています。

 

3.後半へ続く

小道具についてなど、詳しく書きたいのですがここでなんと4500文字を超えてしまったので、続きは後編で書くことにします。

 

それでは皆さん、後編で会いましょう!バイバーイ(@^^)/~~~

 

追記 後編の記事はこちら

seiko-laboratory.hatenablog.com

楽曲研究はこちら

seiko-laboratory.hatenablog.com

 

 

 

 

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