1文字で世界を表現する女「松田聖子」~「真冬の恋人たち」楽曲研究・後編~
こんにちは、研究員第一号のいっきゅうと申します!
今回は、前回の記事の続きで「真冬の恋人たち」について研究していきます!
前回の記事はこちら↓
seiko-laboratory.hatenablog.com
では早速コード進行とともにみていきましょう!
あ、そうそう。今回、コード進行で「スケール外の音を使っているコード」や「一時的に転調しているコード」等は色を変えてみました。
より見やすくしたいといろいろ模索しています。いかがでしょうか?
1.イントロ
キーはGです。
| Gadd9|Fadd9 |E♭add9 |Dsus4 |
1.1「add9」
お分かりの通り初っ端からアドナインス(add9)を使っていますね。
add9とはその名の通りルートから見て9度上の音を加えたものです。
Gadd9で言うと、Gから見て9度上ですのでAですね。ですからGadd9の構成音は「G,A,B,D」となります。(ちなみに、7thや6thを含むコード(〇7や〇6)に9thなどのテンションノートを加える場合は「〇7(9)」というようにカッコでくくって表記します。)
このadd9はとても透き通ったような響きをしていて、普通のメジャーコード、マイナーコードだと俗っぽ過ぎるというときに上手く使うと効果的だと思います。
このイントロを聴いていても、なんだかふわっとしているというか掴みどころがないような感じがしますよね。
1.2「モーダル・インターチェンジ」
そしてコード進行の話ですが、単純に相対表記にすると、
| I|♭VII |♭VI |V |
このようになります。
いきなり非ダイアトニックコードが登場してますがこれ自体は結構よくある定番のコード進行だと思います。
考え方としては、♭VIIと♭VIを同主短調、つまり同じルート「G」をトニックとしたナチュラルマイナースケールから借りてきたものだと考えるのがベストでしょう。
♭VIIはマイナーダイアトニックの7番目のコード、♭VIはマイナーダイアトニックの6番目のコードです。
これは、|♭VII |♭VI |の間だけ一時的に同主短調に転調しているのと同義です。
この考え方を「モーダル・インターチェンジ」とも言います。
なんかハリーポッターに出てくる魔法の呪文みたいで響きがかっこいいですよね「モーダル・インターチェンジ」(。-`ω-)
ここではあまり深く考えなくていいですよ。
要は「一時的に違うスケールを使用する」
という認識で大丈夫です!
ところで、「モーダル・インターチェンジ」し終わった後は基本的にトニックに戻る習性があるのですが、上の進行ではDsus4に進行しています。
( ゚Д゚)「トニックじゃねえじゃん!!!」
と思わずツッコミを入れてしまったと思います。一応僕の解釈を書いておきます。
そもそも、sus4ってのはadd9に響きが似ているんです。
Gadd9の構成音が「G,A,B,D」、 Dsus4の構成音が「D,G,A」。
(´・ω・`)「……おわかりいただけただろうか。」
そうです!「B」以外構成音一緒じゃん!
add9とsus4の響きが似ていると言ったのはこういうことです。
Dsus4はトニックのGと響きがかなり似てるのでこの信仰でも別に違和感は覚えないんですよね。
追記
♭VIはVをトニックしたときのセカンダリードミナントII7の裏コードとも言えます。
要は代理コードです。
ここで裏コードの説明すると長くなるので書きません。
この考え方でいけばこのときキー=Dとなっているわけです。
なのでこのときキー=Gmなのかキー=Dなのかどっちつかずな状態なんですよね。
どこかふわっとして掴みどころがないのはこれが理由でもあるのかもしれません……。
2.Aメロ
同じくキー=Gです。「ふゆのみず」から。
| Dsus4|Am7(9) |(9,13) |Gadd9 |G7(9)|C6(9) |C♯m7(♭5) F♯7 |Badd9 | Dsus4|Am7(9) |D7(9,13) |Gadd9 |G7(9)|C6(9) |C♯m7(♭5) F♯7 |B7|
2.1「ツーファイブ」
|Am7(9) |D7(9,13) |Gadd9 |
と
|C♯m7(♭5) F♯7 |Badd9 |
の動きはツーファイブの動きをしていますね!皆さんもだんだんぱっと見て気づけるようになってきたと思います。
しかし、上のは|IIm7|V7 |I|とオーソドックスなツーファイブワンなのでいいんですが、
下のは|IV♯m7(♭5) VII7 |III |となり、非ダイアトニックコードが出てきていますね。
これについて少し説明していこうと思います。
2.2「IV♯m7」
このコードはジャズでは頻出のコードです。こういうコードを多用しているところをみると、やはり意図的にジャズっぽくしようとしているのでしょうか。
この場合では、「IIIm」に進行するツーファイブにおけるリレイテッドIIm7(♭5)として使われています。
ものすごく簡単に言うと、一時的にキー=Bmに転調してツーファイブワンの動きをしているということです。
「ツー・ファイブ・ワン」の詳しい説明はこちらの記事でしていますのでよく分からないという方は是非。
seiko-laboratory.hatenablog.com
2.3「III」
ところで、ここでちょっとびっくりするのが最後の「Ⅲ」ですよね。
最初コードとりながら
_(:3」∠)_「え、なにこいつ!!!」
て思いましたよ(笑)。
もちろんこの「III」も非ダイアトニックコードですよね。
普通はIIImに行くところをIIIに進行したわけですね。
で、いろいろああでもないこうでもないと考えた結果、単純にキー=Bmからキー=Bに転調したと考えるのがベストだと思いました。
ピアノが弾いているスケールから考えても、こう考えるのがベストでしょう。
そしてこの後Dsus4へと進み再びキー=Gに戻っています。
ちなみにこの部分、歌詞で言うと
ポーズ決めるあなた
のところに該当していて、
「ズ決めるあな」のところでマイナー調になり切なさを演出、
「た」の一文字でメジャーになりぱっっっと明るい印象に変わる。
2番だと
あたたまりにきたの
で、こちらもやはり「の」の一文字で何とも言えない多幸感を見事に演出している。
今理論的に説明した通りの音楽の力もあるとはいえ、
これすげえなあ。。。
「一文字で繊細な感情表現をする女「松田聖子」」
恐るべしである。
2.4ドミナントモーション
数多くのドミナントモーション(強進行)が使われています。
もう皆さん言われなくても分かると思うので、ここではいちいち説明しません。
てか全部してたら記事がいくらあっても足りない(笑)。
あとセカンダリードミナントについてもいちいち詳しくは説明しません、きりがないので。。。説明はこの記事に書いてあります。
seiko-laboratory.hatenablog.com
このAメロでいうと「G7,F♯7,B7」は典型的なセカンダリードミナントでしょう。
しかしこうしてみると、一時転調しまくりですね(笑)。
ゆったりとした曲調なのに不思議とマンネリしてないというか、退屈ではないのはそれが理由の一つかもしれません。
3.Bメロ
キー=G
| Am7(9) |D7 |Bm7 Em7|Am7(9) D7 |B7onD♯ Em7|C♯m7(♭5) A7| Am7(9)|Am7onD |
出ましたよ、掛け合いのパートが。
「可愛いねきみ」 離れてるから
「ねえひとりきりなの」 知らない人が
(⌒,_ゝ⌒)「かわいい~ねき~み~♪」
ついつい男のコーラス部分を口ずさんでしまうのは僕だけでしょうか。
聖子の曲でこういう掛け合いする曲ってあんまりないから新鮮で面白いですよね!
4.サビ
| G|Am7 |D7|G |E7 Am7|B7 Em7| Am7 D7(9)|G |
|E7 Am7|B7 Em7| の部分では「G♯→G→F♯→E」という綺麗な音の流れが出来ています。
また、メロディーに注目してみると、「型(パターン)の繰り返しというのを効果的に使っているのが分かると思います。
あなたはあわてて飛んで来て
と
私の右手を掴むのよ
のメロディーは同じような動きを少し音を変えて繰り返しているのが分かると思います。
そしてその後の
それでいいの それでいいの
の部分でも同じような型を少し音を変えて繰り返していますね。
このように同じ「型」のフレーズをくり返して使うことで、強く印象を与えることができます。
この話はこちらの記事でも書いていますので良かったらどうぞ。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
seiko-laboratory.hatenablog.com
5.まとめ
なんだか最後の方は文字数と疲れと眠気の関係から駆け足になってしまいましたが、僕が言いたいことは前編含めて大体言いました。
前編を見てないという方は見ることをおすすめします。僕の感想はこっちの方でたくさん書いていますので。
seiko-laboratory.hatenablog.com
この曲は後の「Sweet Memories」にも繋がるような大事な一曲です。
この記事の皆さんももう一度「真冬の恋人たち」を聴いて、聖子の歌声を堪能してみてください!
それでは皆さん、次回の記事で会いましょう!(@^^)/~~~
|